涙空
「こんなの助言にもならないだろうけど。俺から言えるのはそれだけ」
「、」
郁也がふい、と私から顔を背けた。今彼がどんな表情をしているのかは誰もわからない。
胸に込み上げて来るものは、なんなんだろう。わからない。
郁也から視線を外して、墓へと目をやる。…なにが助言にもならない、なんだろう。
私にとって、ここまで心強い【助言】は、いままで聞いたこともなかったよ。
「……ありがとう、…郁也」
「助言じゃないから」
「…それならそれでいいよ。でも助かったから」
笑顔を浮かべた。
気分はなんだかとても、清々しい。
郁也がこちらに視線を寄越した。
「…佳奈」
「え、なに?」
つい笑顔を浮かべてしまう私に、郁也はあくまで冷静に口をつく。
なんだろう。ていうか郁也って気温の上げ下げが激しい気が…。
なんていうか、盛り上がった次の瞬間には真顔になってる感じだ。
例が極端すぎたかもしれないけど、でも、あながち当て嵌まってないわけでもない。
そして郁也は、冷静に私に一言。
「…その顔不細工」
たった一言。
されど一言。
髑髏(しゃれこうべ)みたいに冷淡に、毒を吐かれた。