涙空
「…はい?」
「だからその顔やめろって言ったんだけど」
「…」
その顔といいますと。…この笑顔(郁也の言う不細工な顔)をするなと言うことですか。
いやいや。ちょっと待とう。
「人間には笑顔になる権利はあるよね」
「あるね」
「それをするなって言うことになるんですかね」
「そうなるね」
「無理だわ」
無理だよ。それは無理だよ郁也さん。
だって私人間じゃん。ヒューマンじゃん。笑うの当たり前じゃん。
いくら私でも生身の人間なわけだからさ。うん。
サイボーグとかにはなれないんだよね。ごめんね期待に応えられなくて。
「…私、人間」
「わかってる。不細工だった。それだけ」
「ちょ、ええ…。私の顔ってそんな残念なの?」
今更な質問に、きっと郁也は嘲笑うかもしれないけど問い掛けてみる。
確かに私は世間一般的に言う平均以下だけど…!不細工だけど…!
あれ。でもちょっと待って?疑問が生じた。
郁也は私のことを不細工だと言ったけど。…私は一応、郁也の彼女であって。
「…か、彼女が不細工でもいいの…?」