涙空



疑問が浮かぶ。


いいんだろうか。自分が不細工なのはわかる。わかるけど。

彼女が不細工っていうのは…郁也はどう思ってるんだろう。今更だけど。




「…ていうか、あのさ」

「…なに」

「…郁也って、なんで私を彼女にしたの?」




素直な疑問だった。


…こんな問い掛けをする彼女って、周りから見たらおかしいのかもしれない。

だけど、気になることは気になるわけで。



自分に評価を下すなら。それはもう、ものすごく低評価だ。顔は凡人…いやそれ以下。容量は悪いし、性格も捻くれてて。

反対に、郁也は周りからすれば顔は整ってるし、性格は置いといて頭脳明晰。…対照的過ぎるよ。




「…ねえ、郁也」




返ってこない言葉。

聞かない方がよかった?なんて、今更後悔しても遅い。


郁也が薄く唇を開く。
…なんて言われるんだろう。どきりと心臓が一度叫んだ。


郁也と目線が絡む。

次は反らされない。お互い、反らさなかった。

夕焼けの中で、郁也が沈んでいく夕日のように静かに語を落とした。




「…好きだったから」


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