涙空
▼泡沫は消えた
***
来ちゃったよ。
ついに来ちゃったよ。
「範囲よく確認しておけよー」
担任の声だけが教室の中で反響した。
配られたプリントをじっと見つめてから、がくりとうなだれる。
有り得ない。
ついに来てしまった。来てしまったんだ。
現実を受け入れたくなくて、プリントを嫌そうに視界に入れた。
今し方担任から配布されたプリントには。
それもうはっきりと【中間テスト出題範囲】とワープロで打たれている。
「……最悪」
ぽつりと一人本音を漏らしてみる。が、誰も聞いてない。
中間テストがついに来てしまった…。
「受験生じゃないにしても勉強はちゃんとやっといてくれよ。後悔してもいいなら話は別だがな」
「……」
「プリント、目通しておけよ。今回の中間テストの出題範囲だ。俺が打ってやったんだからな。感謝しろよ」
「……」
ていうか何様なんだろうこの男教師は。
感謝しろよ、じゃないでしょうよ。高校教諭がそれでいいのか。え?いいんですか?