涙空



「…なんか問題起こしてたっけ」




ええ。…それは困る。

内心焦る私に、怜香はいつも通りに笑いかけた。

なんでそんないつも通りなの怜香。すこしは心配しようよ。ねえすこしは心配して。




「どんまい」

「おい」

「じゃ、あたし夏樹と用事あるから」

「えええ…!」

「あ、藤崎もう帰ってたよ」

「ええええ…!」




ちょっと!ちょっと!

待って、ちょ、酷い!それはない…!郁也帰ったの?一人で帰っちゃったの!?


掴みかけた鞄を取る気力までも抜けていきそう。

思わずさっきのようにうなだれる。怜香に手を振られて、力無く返した。



…夏樹君と遊ぶんだろうか。畜生、羨ましい…!

もう見えなくなった怜香を羨ましく思いながら、教卓の方を振り返って口を開いた。




「…先生、私なにか問題起こしましたか」

「お前ネガティブ過ぎるだろ」

「あ、違うんですか?」

「違うわ」




教室の教卓で一部始終を見ていた担任は私に呆れたように言った。


なんだ違うのか。
思わず安堵の溜息を吐き出した。



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