涙空

「俺が見る」

「…え」

「それしかないだろ。お前の彼氏も困った野郎だなオイ」

「それでなんで先生に教わることになるんでしょう」

「彼氏じゃ嫌なんだったらもう方法がこれしかないだろ。俺数学担当だしな。手っ取り早いだろ」

「…手っ取り早過ぎますね」




でもこの人から教わるっていうのも、それはそれで厳しそうな気がする。


まあ、あの郁也よりはマシだと思うけど。…たぶん。




「お前、本当に数学破滅的だな。よく生きてこれたな」

「数学出来なきゃ死んじゃうんですか。この世界だと」

「俺の中の論理感」

「どんな論理感してんの…」




それはない。いくらなんでも、先生。それはないでしょうよ。

ていうか私生きてるから問題ないです。




「明日の放課後から始めるか」

「…お願いします」

「ガンガンやるからな。出来なかったら一発打たれるぐらいの勢いでやれよ」

「…先生まじでクビになりますよ」

「冗談」




冗談に聞こえない。

貰ったプリントにちらりと視線を落としてみる。わけのわからない数字がごちゃごちゃと紙の上に並んでる。


やっと手に取った鞄にそれを突っ込む。




「じゃあ私、帰ります」




頭を下げてから教室を後にした。

明日から、いつもとは違う勉強会のスタートだ。