涙空




***


まあ、予想はしてましたよ。人間誰しも都合のいいことばっかり転がってくるなんてことないですもんね。

そりゃそうですよね。だから予想はしてた。してた―――けど。



けども。




「おい。お前の頭ん中は脳みそっつーもんは入ってないのか。おい。言ってみろや。すっからかんかテメエの頭ん中は」

「…すっからかんです」

「そりゃそうだわな。すっからかんだわな。開始早々5分も経たずに『わかりません』ってなんだお前」

「いやもう、ほんとすみません…」




だけどこんなスタートから5分も経たずに怒られるって。どうなのコレ。

そりゃ私の頭がすっからかんなのも悪いけど。ていうかそれが理由の大部分を占めてるけど。




「そ、そんな怒らなくてもよくないですか」

「甘やかしてたらお前が伸びないんだよお前が。飴と鞭(むち)だよ、飴と鞭。俺は上手に使い分けてる」

「もはや鞭しかないんですが」




鞭しかなくて心が大ダメージを負ってるんですけど。

数学のプリントをじっと見つめながら思ったのは そんなことだった。


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