涙空
「まあ、お前が成績を伸ばしたいなら話は別だけど」
「…私が?」
私の机に正面から机をくっつけて、真正面で頬杖をつく担任をシャーペンを持ったまま見上げる。
だけどすぐに、「手動かせ」持っていた赤ペンを私に向けて言ってきた。
「ちょ、赤ペン危ないんですけど」
「刺すわけじゃねえよ」
「刺されたら困るんですけど…」
ぶつぶつ文句を言いながらも、プリント用紙に並べられた問題をのろのろと解いていく。
…やっぱり郁也に教わった方がいいんだろうか。
いや、あんな性格の彼に教えてもらえるのかもわからないし、担任に教わるのを望んだのは、そもそも私なんだけど。
だけど、なあ。
「…お前ら、なんかあったのか?」
「…はい?」
かたん、担任は机上に赤ペンを置きながら私に言う。
その瞳は私からなにかを探るように、真っ直ぐにこちらへ向いている。
「…なんかって、なんですか」
「なんかはなんかだよ」