涙空
「なんで幼稚園教諭になりたいの?」
そう私に問い掛けた怜香は、進路もまだはっきりとは決まっていないらしい。
とは言っても、私もただ希望を口にしてるだけで進路なんて曖昧にしか考えていない。
「なんか、子供っていいなあ、と思ったから」
「でも野崎ピアノ弾けないよね」
「弾けないけどなんでしょう。弾けないけど」
「いや?別に?大学行ってからやるならやるで良いんじゃない?ピアノは幼い内にやった方がいいって言うけど、全員に当てはまるわけじゃないしな。寧ろ大学入ってから天才的な才能みせる人もいるよな」
「郁也って言いたいことをわかりやすく遠回しにするよね」
「藤崎が言いたいのって要するにさ、佳奈じゃ大学入ってからピアノ始めたんじゃ手遅れだって言いたいんでしょ?」
「ちょ、怜香」
「いや?別にそういうわけじゃないけど。ただ野崎がもうすこし要領良かったら面倒事にならなかったのにって思った」
「郁也、私が21点取ったことまだ根に持ってるんだね。よくわかりました」