涙空
「なんかぎこちないっつーか」
「…別に、そんなことないですけど」
ふいとこちらをじっと見てくる目前の男から視線を逃げるように反らす。
私が郁也に【あの話】をしたのが一週間近く前だったと思う。
…あれから、どことなく二人の間に見えない壁のようなものが出来てしまったような気がする。
放課後は今までと同じように帰り道は一緒に歩くけど、どこか会話に違和感を感じることがあったりはした。
なんとなく、…担任の言うように、…ぎこちないとも言える。
「…ガキの恋愛事情なんか知ったこっちゃないけど」
「…先生からしたら高校生はガキ、なんですか」
そういえば前にも、郁也のことをガキだのなんだの言ってたな、この人。
私からすれば郁也ほど大人びた高校生は見たことないくらいなんだけど。
それでも、この人からすればガキ…なのか。
「あいつはお前よりガキだよ」
「は!?」
かしゃん、
言われたその瞬間、自分の声と一緒に床に落ちたシャーペン。
ころころと転がるそれには目もくれず、担任を見つめる。
「な、なに言ってんですか…」