涙空
「…何て言うか」
ぽつり、言葉を零していく。
郁也は私にとっては掴めない存在だ。だから、彼はわからない部分が多すぎる。
不安なんだ。
「…私って、容量悪いじゃん?」
「うん」
「……」
「え、あ、即答したら悪かった?あ、ごめん」
「…いや、うん。私って容量悪いからさ、数学を担任に教えてもらうことになって」
ぽつりぽつり、話しはじめる。
ていうか私ってそんなに頭の悪い印象が根付いてるの?なんか物凄くショックなんだけど。
「…それで、昨日言われたんだけど、…郁也、進路希望を白紙で提出したんだって」
「郁也が?」
「…うん」
「いや、まあ、あいつなら有り得るだろ」
「え、有り得るの?」
予想外な返答に、目を見開く。有り得る、のだろうか。
そこで、荒々しく風が吹いた。自分の不安をぞんざいに扱うように、荒々しい。
髪を抑えながら夏樹君に言った。
「…郁也のこと、私、あんまりよくわからないから。…郁也ってなにがやりたいのか、とか話してくれないし」
「…それで相談に来たわけね」
「…そうなりますね」