涙空



あらまあなんて容量の良い。熟(つくづく)思う。説明の手間が省けた。

はははは。羨ましいよ。私にも分けてよ、その容量の良さを。




「…郁也って、なにがやりたいのかな」

「…」




また強く風が吹く。

あーあ。私が容量が良くて、人の心情まで読み取れる人間だったらよかったのに。


それなら、こんなに悩む必要もないのに。

不安になることも、無いのに。




「…なんか、本当ごめんね。巻き込んで」

「まあ、仕方ないだろ。野崎の頭じゃ俺が被害に遭うことまで想定出来ないだろうから」

「…それ貶してるってことだよね」

「そういうのは読み取りが早いんだな。関心するよ」

「心から関心してない顔されてもコメント出来ない」




夏樹君はすこし、私からして遠い存在だった。

怜香の彼氏、郁也の親友で――――、私と彼の関係を表すぴったりの言葉って、ない気がした。




「…夏樹君」

「浮気?」

「殴るよ」




浮気じゃない。

私、親友の彼氏に手を出すほど尻軽じゃない。

睨みつけて拳に力を込めた私に「冗談冗談」あくまで夏樹君は軽く返してきた。


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