涙空
「なんでそんなこと言えるのか、不思議なくらいだよ。郁也はそんなに私を大切だと思ってるように見える?」
我ながら哀しい問い掛けだと思った。恋人なのにこんな問い掛け。失礼も甚だしいだろう。
だけどそう言わずにはいられなかった。
郁也は一度だって私を大切だなんて主張したことがあった?…無いよ。一度も、無かった。
「夏樹君が思ってる程、郁也にとって私はそんな存在じゃないよ」
「…野崎、自分のこと低評価し過ぎだろ」
なんだか答えるのも億劫になりそうで、夏樹君の【低評価】という言葉に黙って首を左右にゆるゆると振った。
…違う。私は己を低評価なんてしてない。確かに高評価なんてするはずはない。
だけど。
「だから、それが郁也と私の関係なんだってば。恋人だけど、そんなに近い関係じゃないんだよ。だから郁也だって、私に話してくれないんだよ」
強く、なにかに胸を捕まれるようだった。なにかに噛み付かれてるようだった。
鋭い痛みが、胸を襲う。それに顔を歪めながら持論をぶつけた。