涙空
殺戮と似たそれ
***
「なに一つ話してなかったんだな」
「…」
5限目の終わりを告げる鐘が鳴り終わってから少し経って、教室へ戻ってきた夏樹。空いていた俺の隣席にがたんと腰を下ろしながら言う。
授業に出てなかった理由はそれか。頭の中で回線が絡まることなく一つに繋がる。
「…なにをだよ」
「惚けんなよ」
「…」
逃げ道には気付いたらしく、塞がれた。
「お前なら話してるかと思ってたけど」
「…佳奈に聞かれたのかよ」
「さっき」
「…」
聞き出そうとした明確な理由は知らないが。大方、誰かが根拠をつくったんだろう。それぐらいなら容易に予測できる。
「話したくないのもわかるけどさ」
夏樹が言う。
俺のことを気使って言ってるのが身に染みて感じさせられる。