涙空



その問い掛けに、眉間に皴を寄せる。…だから、今。

【時期が来たら】って言っただろ。話くらい最後まで聞いてろよ。




「俺が決めた時に言う」

「…まあ、多少抵抗があるのもわかるけどさ」




もう直ぐ次の授業が始まるのだろう。

時計を見遣れば長針が指し示す数字は授業開始2分前。かちりかちりと忙しなく働くそれから視線を外す。

それと同時に、がたがたと椅子を鳴らす音が耳に入ってくる。




「無理に話せとは言わないけど」

「…お前に心配される筋合いもないけどな」

「それはないだろ」




これでも俺、野崎に相談されたんだぜ。


苦笑を浮かべてそう言われる。…相談。それを受けていたから、さっき二人が授業には出ていなかったのだろう。


それが、些か不愉快だった。微量の苛立ち。




「…どうしたんだよ。眉間に皴寄ってるけど」

「…別に」




目前にいる夏樹から視線を大幅に反らした。


それには気にすることもなく、鳴り響いた鐘の音に「やべっ」慌てたように時計に目線を遣った夏樹。




「授業始まる、戻るわ」




なにも答えずに、さっさと戻れと言わんばかりに視線を送る。


俺からの視線にまた苦笑しながら、自席に戻っていった。


< 401 / 418 >

この作品をシェア

pagetop