涙空
その問い掛けに、眉間に皴を寄せる。…だから、今。
【時期が来たら】って言っただろ。話くらい最後まで聞いてろよ。
「俺が決めた時に言う」
「…まあ、多少抵抗があるのもわかるけどさ」
もう直ぐ次の授業が始まるのだろう。
時計を見遣れば長針が指し示す数字は授業開始2分前。かちりかちりと忙しなく働くそれから視線を外す。
それと同時に、がたがたと椅子を鳴らす音が耳に入ってくる。
「無理に話せとは言わないけど」
「…お前に心配される筋合いもないけどな」
「それはないだろ」
これでも俺、野崎に相談されたんだぜ。
苦笑を浮かべてそう言われる。…相談。それを受けていたから、さっき二人が授業には出ていなかったのだろう。
それが、些か不愉快だった。微量の苛立ち。
「…どうしたんだよ。眉間に皴寄ってるけど」
「…別に」
目前にいる夏樹から視線を大幅に反らした。
それには気にすることもなく、鳴り響いた鐘の音に「やべっ」慌てたように時計に目線を遣った夏樹。
「授業始まる、戻るわ」
なにも答えずに、さっさと戻れと言わんばかりに視線を送る。
俺からの視線にまた苦笑しながら、自席に戻っていった。