涙空
「…」
話せないわけじゃない。ただ気乗りしないだけで。
自分の欠点を見せるのは正直抵抗がある。誰でも今の自分と同じ立場に居れば同じことを思う筈だ。
「ここテストに出すからなー」
静まり返る教室内に響く教師の声。数学の教科書も開かずにそれに耳を傾ける。
…面倒。黒板にだらだらと白いチョークで書かれた数式を板書するのも億劫だった。窓の外、何気なく校庭へ視線を運ぶ。
頬杖を付きながら、ふと思う。
時間はもう、ない。
聞かれてもおかしくはない。なにも言わずに、見えないように隠して、…何年経つだろう。年数を重ねるごとに息苦しさが募っていく。
限界が目に見えてる。
溜息をつくごとに、目前に溶け込む自分の世界が排除されればいいと思った。凡て、泡沫のように、消えてしまえばいい。