涙空




***


鐘が鳴る。

担任の「気をつけて帰れよー」気怠い声と、がたがたと椅子を鳴らす音が室内で飽和される。


耳を傾けることもしなかったショートホームルームは終わったらしい。

机の横に掛けた鞄に手を伸ばす。……そのとき、




「あ、いたいた。おい、藤崎」

「…」

「このあと何もないだろお前。ちょっと残れ」




担任に呼ばれる。


吐き出したい溜息を喉の奥で飲み込んでから、鞄に伸ばして宙を彷徨っていた手を下ろした。


ざわざわと廊下が騒がしくなる。どのクラスもホームルームが終わったのだろう。

部活やら用事がある生徒が足早に出て行った今、残っているのは自分を含めて4、5人だった。



そんな中で、担任に視線を送った。




「おいおい、お前らさっさと帰れや。今から大事な話すんだからよー」




また緩緩と気怠い声でまだ室内に残る俺以外の生徒に言う。

それを気にかける様子もなく「今帰りますー」軽く返していた。


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