涙空
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鐘が鳴る。
担任の「気をつけて帰れよー」気怠い声と、がたがたと椅子を鳴らす音が室内で飽和される。
耳を傾けることもしなかったショートホームルームは終わったらしい。
机の横に掛けた鞄に手を伸ばす。……そのとき、
「あ、いたいた。おい、藤崎」
「…」
「このあと何もないだろお前。ちょっと残れ」
担任に呼ばれる。
吐き出したい溜息を喉の奥で飲み込んでから、鞄に伸ばして宙を彷徨っていた手を下ろした。
ざわざわと廊下が騒がしくなる。どのクラスもホームルームが終わったのだろう。
部活やら用事がある生徒が足早に出て行った今、残っているのは自分を含めて4、5人だった。
そんな中で、担任に視線を送った。
「おいおい、お前らさっさと帰れや。今から大事な話すんだからよー」
また緩緩と気怠い声でまだ室内に残る俺以外の生徒に言う。
それを気にかける様子もなく「今帰りますー」軽く返していた。