涙空



「…やりたいことないのか」




ぺらり、一枚の自分の名前しか記入されてない紙を見せ付けてくる。

指先でぺらぺらと揺らされるそれは【進路希望】と印刷してあった。




「…」

「俺はお前じゃないからお前が進学しようが就職しようが知らないけど」

「…」

「まずはお前が決定しなきゃ意味ないだろ」




―――教師ってのは進路を決定した生徒の背中を押すことしか出来ないんだよ。



担任が静かに言う。




「…言い換えれば俺達側の人間はな、それしかやってやれねえんだよ。お前の変わりに勉強することも、内心上げることも出来ない」

「…」

「お前のことはお前でやるしかないんだよ。俺はあくまで背中を押すだけだ」




いつも以上に、その目はなにかを訴えかけてくるようだった。


ふいと視線を反らす。


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