涙空
反らした先で視界に入った机。その机にいつも座る人物が頭に思い浮かび――――瞼を下ろして排斥する。
数秒間、流れる時間と自分とを分断する。ほんの数秒間だけ、自身の世界に溺れた。
「…くだらないか?」
瞼を上げれば、担任が自分に問い掛けていた。
なんでそんなに、真っ直ぐにこちらを見てくるのかがわからない。
「…さあ」
俺がそう思っているか。それを聞き出したところでなんの利益に繋がるんだよ。
なら。逆に聞いてやろうか。
「…俺が周りを低俗だと思ってるように見えるんですか」
担任には視線は向けず、言葉を並べた。
否定されようが肯定されようが、それは俺にとって何にもならない。
きっとこの担任は、それを了解した上で俺に返してくる。
「…見えてなかったらこんなこと聞かねえだろうが」
ほらな。やっぱり。
想定内の返答だった。面白みに欠けた、それは例えるなら模範解答だ。
すべてわかっていた結果に、苦笑も失せる。
「…進路希望、書けってことですか」
早く終わらせて欲しい。
その一心で言う。