涙空
確かに卵焼きは真っ黒くろすけだったけど。苦かったけど。
「お、美味しかったんだよ!?」
「大変だな。味覚障害が起きたな。明日当たり病院行こうか」
「起こしてませんけど」
「いいよ、明日は作ってやる」
そう言って、不服そうな顔をさらけ出す私の頭を数回撫でる。
ちょ、なに子供扱いしてんですか。
「ちょ、やめてよ馬鹿ですか。馬鹿なんですか?高校生の娘の頭撫でるって」
「素直に喜ぼうよ」
「喜べるか!寧ろ複雑な心境ですが!」
ばっとその手を払いのける。やめてください、いい年して。
「わかったわかった。照れ隠しにしちゃ酷いな」
「照れ隠しじゃないっつの」
「はいはい。じゃあ明日は作るから。夕食出来たら呼ぶ」
「うん」