涙空
「夏樹君から教わったんだ」
「普段は別に自力だけどね。なんか今回は夏樹に教わってた」
「相変わらず仲良しですね」
まあ付き合ってるんだし仲も良いだろうけど。
そう怜香に伝えれば、口を開いたのは怜香ではなく、隣にいた彼だった。
「…あいつ頭だけは良いもんな」
ぽつり、途轍もなく失礼なことを彼女を目前にして呟いた郁也。
――――おいおいおい。
怜香がいるのにそれ言うか。思わず隣に視線を向けてしまった、けど。
「それは言えてる。まあ教えてくれるから使えるよね。…ていうか夏樹知らない?」
「…知らないよ」
今彼氏のこと使えるって言ったね?そう言ったよね怜香?
…怜香も怜香で彼氏をなんだと思ってるんでしょう。とりあえずぼそりと返事だけしておく。