涙空
絶対に、近い。
顔が熱くなる。
どくん、どくん。心臓が叫んでるのがわかった。
――――するり、郁也の指先から、私の髪が解放された。
と、思ったら。
「―――――っ、ちょ、郁也」
目を見開く。急に、視界が、薄暗くなった。
背中に回された腕は郁也のもので。状況を把握する。
…俗に言う、抱きしめられている状態。
「いいいい、郁也?」
「昨日言ってたの、野崎だからね。そんなにこうされたかったのか」
「っ、…近いっす!近いっす、郁也さん…!」
「近いね」
とだけ一言。郁也の息がかかる。
流石に怜香が言ってたような窒息死とまではいかないけど、心臓は破裂する気がする。