涙空



絶対に、近い。
顔が熱くなる。

どくん、どくん。心臓が叫んでるのがわかった。



――――するり、郁也の指先から、私の髪が解放された。



と、思ったら。




「―――――っ、ちょ、郁也」




目を見開く。急に、視界が、薄暗くなった。

背中に回された腕は郁也のもので。状況を把握する。



…俗に言う、抱きしめられている状態。




「いいいい、郁也?」

「昨日言ってたの、野崎だからね。そんなにこうされたかったのか」

「っ、…近いっす!近いっす、郁也さん…!」

「近いね」




とだけ一言。郁也の息がかかる。

流石に怜香が言ってたような窒息死とまではいかないけど、心臓は破裂する気がする。



< 77 / 418 >

この作品をシェア

pagetop