涙空
「珍しいね。藤崎がそんなことするの」
「珍しいもなにもないよ本当…」
「佳奈から頼んだの?」
「頼まないよ」
言いながら、ぱか、弁当箱の蓋を開けた。
「…郁也って難しい、よね」
呟く。蓋を開けた瞬間に焦げた卵焼きが視界に入る。
いつ見ても残念な弁当箱だ。私の手元を見遣った怜香が一言。
「…いつも自分で作ってるんだっけ。佳奈って」
「毎朝早起きして頑張ってるんだよ」
「それにしては悲惨な中身よね」
「……」
自分の不器用さに悲しくなる。ちらりと見た先には怜香の彩り綺麗な弁当がある。
比べてしまうのは仕方ない。