涙空
「…執着する理由が他にあるんだろ」
「、」
キーン、…まただ。野球部の金属音が聞こえた。
「な、なにをおっしゃりますか先生」
「別に聞き出したりはしねえけど。…お前、最近なんかあったのか?」
「え?」
「俺は担任だからな。生徒の顔くらい見れば察するんだよ。…隈、出来てんぞ」
「あ、え、隈…」
私の目許を静かに指差して言った先生。思わず、すっと自身の指先で目許をなぞった。
…隈なんて、出来てたのか。全く、気づかなかった。毎朝鏡は見てるんだけどな。
「溜め込みすぎるといつか爆発するぞ、お前」
「……」
「まあ困ったら彼氏にでも縋るんだな。あいつならなんとかしてくれるだろ」
「…先生は郁也のこと、どう思いますか」
頬杖をやめた先生にそう問い掛けた。教師から見て、あの人はどんな生徒なんだろう。
先生が口を開く。…その表情は、笑っている。
「可愛げのないガキ」