涙空
郁也を見上げれば、
「昨日より濃い」
「え」
「隈、酷くなってる」
「…え」
そう私に呟く。思わず声を漏らした私に、また郁也は口を開いた。
「ハンカチ持ってる?」
「も、持ってる」
「汚してもいい?」
「いいけども、…え?なにに使う気ですか郁也さん?」
「いいから」
そう促す郁也に、渋々ながら制服のポケットからハンカチを取り出して手渡した。
花柄のハンカチを一瞥すると、郁也は私の手首を引いて歩き出した。
「え、ちょ…?」
疑問符を浮かべながら、引かれて足が進む。
教室から出たと思ったらすたすたとそのまま突き進む郁也。
ど、どこに向かってるんだろう。