涙空
そのまま強制的に足を進めれば、…着いた先は教室からすこし離れた水道だった。
「郁也ここ水道…」
そう、私が言うと、聞いてるのか聞いていないのか。
郁也は「うん」私の手首をするりと解放して返事をした。
すると、その手で蛇口を捻って水を出すと、持っていたハンカチを濡らし始めた。
「……」
音をたてて流れ出る水でハンカチを濡らすと、軽く絞る郁也。
一方で、私はなにがなんだかわからなくて疑問符を浮かべたまま、突っ立っていた。
「…郁也、…なにしてんの?」
「ハンカチ濡らしてる」
「そ、それは見ればわかるけど」