涙空



な、なんでハンカチ濡らしたんだろう。ていうか私がここにいる意味ってあるんだろうか。

そう思って、とりあえず名前を呼んでみたら。




「ねえ、郁也」

「ちょっとこっち、向いて」

「はい?」




すっと頬に伸ばされた郁也の指先。「え、」思わず口をつく。

え、ちょ、え?




「郁也、なにして…」

「目、閉じて」

「は?え、ちょ、ここ学校…」




そう言って焦り出した私に、郁也がハンカチを持ったままの手を伸ばす。

……って、




「ぎゃああああ!ちょ、なにしてんの郁也!?痛いんだけど!?」

「拭いてる」

「え、ちょちょちょ、」




ごしごしごしごし、郁也が私の目許を濡らしたハンカチで拭う。

いや、もう拭かれてるっていうか痛い。痛いんですが!



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