恋が生まれる瞬間
「じゃあ、行こ」と杏子ちゃんは私の手を取り廊下へ向かう。


途中、友達と笑って話す鳴瀬君が視界に入る。




あ、――目が合った。

小さくバイバイと手を振る鳴瀬君。




「杏子、里香!早く」

真由ちゃんに呼ばれて反射的に振り返ってしまい、慌てて鳴瀬君へと視線を向けた時には、もう友達と話していた。


「……」

「さぁて、どこ行こうか?」

「駅前のファミレスでいいんじゃない?」

「そだね。」

真由ちゃんと杏子ちゃんの後ろを歩く。

階段に差し掛かり、教室が見えなくなるところでもう一度振り返ると、笑顔で話す鳴瀬君の横顔が見えた。
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