恋が生まれる瞬間
「俺、どんなに走っても記録悪くって、陸上辞めちゃおうかなって思ってた時に、たまたまお前の走るトコ見てさ、

お前、1着でもないのに走り終わった後スゲー笑ってて、あ、先生には怒られてたみたいだけど?」




――アハハ、鳴瀬君あんまり褒められてる気がしないんだけど





「それ見て、俺は何で走るんだろ?みたいなこと考えさせられたって言うか…

それから走ることを楽しめるようになったんだ。お前の中学校と学区違うから、大会で見れるのって夏しかなかったよな?次の大会にはお前に負けないようにって思って練習した。

で、最後の夏の大会、お前はすぐに見つかったんだけど……」





あー、鳴瀬君はあのレースを見ていたんだ。
一番知られたくなかったことに鳴瀬君が触れようとしていたからか、耳がキーンとする。


背中をツーっと冷たい汗が一筋流れる。
それがすごく気持ち悪くて、ザワザワと鳥肌が立つ。



「でも、1年ぶりに見たお前、全然楽しそうじゃなくて、見てらんなかった。俺、お前にもう一度会ったら、お礼言おうと思ってたけど、声さえかけらんなかった」
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