恋が生まれる瞬間
「鳴瀬君…」




もう、泣き出してしまいそう





「でも、入学式でお前見てさ、俺一緒に走れるんだって思ったんだ。でも、お前陸上部に入らなかった」



「うん…」

「そのうち、俺も怪我して走るのやめちゃおうかなって思ったんだ」





「うん」





キキ―っとブレーキ音がして、駅に着いたんだと気付いた。


静かだった車内に、高校生が数人入ってきて、ゲームの話で盛り上がっている。





私と鳴瀬君の間には、沈黙が流れている。



ガタンガタンと走りだした電車の音がして、再びサーっと風が窓から入って来た。

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