恋が生まれる瞬間
「戸田さん、お家この辺?」

「あ、はい。そこ曲がったとこです」

「じゃあ。ここで降りた方がいいね」




車は道の端にゆっくりと停まった。




「だって、大事な娘が突然こんな時間に知らない男の車から降りてきたら、お父さん失神しちゃうかもしれないでしょ?」




冗談ぽく言うお兄さんだけど、すごく気を使ってくれる人なんだって分かった。



「あ、ありがとうございます」

「うん。またね戸田さん」




いつの間にか握られていた手をブンブンと振りながら「お前は、ちゃんと家に入るまで送ってこい」と鳴瀬君に言った。
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