恋が生まれる瞬間
――逃げちゃいけない
スカートのポケットにあるイルカを無意識に触れる。
不思議と、力が伝わってくる。
ギュッとイルカを握りしめ、俯いていた顔を、しっかり杏子ちゃんへ向ける。
スーッと大きく息を吸って、しっかり杏子ちゃんの顔を見返すと、どんどん勇気が湧いてきた。
「あ、あのね、私…鳴瀬君が好きなの!でも、杏子ちゃんを応援するって言ったときには、気付いてなくって……でも、でもこの気持ちは、譲れないの。だから―――」
「やっと、気付いたの?そんなこと、里香以外みんな知ってるよ?」
「えっ?」