恋が生まれる瞬間

「あーもう、里香には負けた。私は諦める。ってか、もうとっくに諦めた」


「えっ?杏子ちゃん…?」





ギュッと抱きしめた手を解いて、私の顔を覗きこむ杏子ちゃんは、ホッとしたような、やさしい目をしてる。





「あのね、なんだか里香に持って行かれそうで、焦って伝えちゃったの。で、あっけなく失恋。ヘヘヘ…かっこ悪いでしょ」


ペロっと舌を出しておどけた杏子ちゃん。




「そんなこと…」

「あ、でも同情不要だから。鳴瀬はダメだったけど、得るものもあったから」
< 405 / 542 >

この作品をシェア

pagetop