恋が生まれる瞬間
「あーもう、里香には負けた。私は諦める。ってか、もうとっくに諦めた」
「えっ?杏子ちゃん…?」
ギュッと抱きしめた手を解いて、私の顔を覗きこむ杏子ちゃんは、ホッとしたような、やさしい目をしてる。
「あのね、なんだか里香に持って行かれそうで、焦って伝えちゃったの。で、あっけなく失恋。ヘヘヘ…かっこ悪いでしょ」
ペロっと舌を出しておどけた杏子ちゃん。
「そんなこと…」
「あ、でも同情不要だから。鳴瀬はダメだったけど、得るものもあったから」