恋が生まれる瞬間
鳴瀬君と一緒に帰るのは、何度目かなのに、今日は初めて歩いて駅まで向かう。



心地よい風が二人の間を何度も通り過ぎている。



この前まで、この時間はまだまだ陽が昇っていたのに、今はもうすっかり傾き始めた夕日に、私たち二人の影も長く伸びている。




影の二人には、一人分の距離が開けられていて、それを見ていると、その距離がもどかしく思える。






「鳴瀬君、私ね」

「戸田さ――」

妙な沈黙を、絶妙なタイミングでハモってしまった私達。
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