恋が生まれる瞬間
「あ・り・が・と」


口だけで告げると、ピースしてくれた。




電車が発車して、カーブを曲がったところで鳴瀬君は見えなくなった。





未だにドキドキする心臓と、切れた息使いを深呼吸で整えながらふと窓に映る自分の顔を見ると、


なぜか、自分の顔がすごく赤くなっていることに気付いた。




「運動不足だなぁ」




今日、何度目かの独り言は、電車の音にまぎれて誰にも聞かれなかった。

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