花火が消えるまでに
しっかりと右手を握られたまま部長と2人でお店の外へと出た
昼間よりかは涼しい夜風が火照った頬を冷やす
「あそこで少し休もう」
お店の前にあった木製のベンチに2人で腰をかけた
「あ、悪い」
「い、いえ…」
そっと右手が部長の大きな手から外れる
右手の手汗が尋常じゃないくらいで、私の緊張を表していた
「あの、ほんと私大丈夫なので、戻っていただいて…」
「いや、俺も結構飲んだから。それに今は戻っても酔っ払いに絡まれるだけだしな」
部長はふわっと笑ってゆっくりと背もたれに寄りかかった
今までこんなに話したことも、近くで部長を見たこともない
まるで夢のような気分
「部長って、よくお酒飲まれるんですか?」
「ん?ああ…。でもどちらかというとゆっくりと飲むのが好きだな。わいわい飲むのはどうも苦手でさ。楽しんだけどな」
あ、それすごくわかる
私はあまり普段飲まないから、すぐに酔いがまわってしまう
だから毎回、佳菜子の高いテンションについていくのでいっぱいいっぱいなのだ
「私も好きなんですけど…。みんなのようにたくさん飲めないので…」
「そうなのか…。まあ、みんなが騒いでるのを見てるのは悪くないな」
部長が優しく笑う姿をこんな距離から見れる日がくるなんて…
「船山?」
あ…ちょっと見過ぎたかも…
部長は不思議そうに私を見ている
「俺に何かついてる?」
「い、いや…その…」
私がしどろもどろになっていると、部長はまた笑った
「ほんと船山は見てて飽きないな」