花火が消えるまでに



振り向くとついさっきまで土井さんと話していたはずの部長が立っていた

「え、忘れ物?」

私は慌ててカバンの中を確認した

お財布、携帯、ポーチ、定期、ハンカチ、ティッシュ…


「えっと…私は大丈夫ですけど…」
「じゃなくて、コレ」


え?と聞く前にふわりと肩にかけられた部長のジャケット

柑橘系のコロンの香りがふわりと鼻をかすめた


「ちょっと外冷えてたからな。風邪引くなよ?」

部長はそれだけ言うと先にドアのほうへと歩き出した


私は突然すぎて思考停止していたけど慌てて追いかける


「だ、大丈夫ですよ!」
「いいから持ってって。明日また返してくれればいいからさ」


優しい部長の笑顔に私はまた何も言えなくて…


ただ外へと向かう部長の姿を頬を紅く染めて見ていることしかできなかった


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