花火が消えるまでに
ふと視線をあげるとちょうど部長がこっちに向かって歩いてくるのが見えた
この中庭は夏場でも涼しくて、ベンチも多いので利用者が多い
社員食堂とかもあるけど、ガヤガヤと人が多くてなんか落ち着かないので、私と佳菜子はいつもここでお昼を食べている
「あ、部長だ。なんか珍しいね」
「そ、そうだね…」
確かに普段は食堂とか行ってるみたいだし、珍しい…
今日はお弁当の日なのかな?
のんきにそんなことを考えていると部長と目が合ってしまった
どきり、と心臓が変な音を立てる
「なんだ、お前達昼はここでとってたのか」
「はい!でも部長は珍しいですね?」
「ああ、今日はなんだか外で食べたくてな、まあコンビニ弁当だがな」
部長は苦笑いで、手に持った袋を少しあげて見せた
「部長もコンビニとか行くんですね」
「おいおい…。そりゃ俺だってコンビニぐらい行くさ」
部長は佳菜子の言葉に笑いながら、さっと私の隣に座った
ふわり、と昨日のジャケットからも香った優しい香り
「隣いいか?ってかもう座っちゃったけど…」
「は、はい…」
緊張する私なんてお構いなし
部長は腹減った~なんていいながらお弁当を取り出し、割り箸を開ける
「毎日似たようなもん食ってるから、最近腹の周りがやばいんだよな…」
「えー?部長彼女さんとかに作ってもらわないんですか?」