花火が消えるまでに





私がまだ半分も食べ終えてないのに、2人は綺麗にお弁当を平らげていた


「よっし、望のクッキーちょうだい~」
「ほんと期待しないでよ?」


私はいったん自分のお弁当を膝に置いてカバンからクッキーの入った袋を取り出した


開けるとふわりと甘い香りが広がる


「もしかしてメープルクッキー?」
「もう…佳菜子にはかなわないな…好きだったよね?メープル味」


佳菜子はありがと~と私に飛びついてクッキーに手を延ばした


「あーうますぎ!今回はチョコも入ってる~!」

「うん、前使ったのが余ってたから使っちゃった」




きゃいきゃい私たちがはしゃいでいると、隣りで部長がつぶやいた



「それ、俺にもちょうだい」

「え?」


部長のほうをみると珍しそうにクッキーを見つめていた


確かに部長にあげたのはもっとシンプルなバタークッキーで、これとは違うけど…


「これ、結構甘いですよ?佳菜子向けに作ったので」

「ああ、でもすっごくうまそうだから」


部長はにこっと笑うとそっとクッキーをひとつとり、口に運んだ




「…うまい」

「ほ、ほんとですか?」




部長は一瞬驚いたように私をみて、それからまた優しい笑顔を浮かべた




「こういうの、俺も好きだな」

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