花火が消えるまでに



加藤先輩はすっごく楽しそうに私に詰め寄ってくる

「確かに望の恋バナあんまり聞いたことないかも!ね、いるの?好きな人!」

「え、いや…そのぉ…」


酔っ払い2人に絡まれて私はどんどん答えずにはいられなくなる

こ、こわい…


「こらこら、船山困ってるだろ」

「でも~気になるんですよ~」


優しい部長が助け舟を出してくれてなんとか話題は少しずつずれていく

今は佳菜子の彼氏についての討論になっていた


「あ、部長…ありがとうございました」

私は苦笑いしながら、後ろの部長にお礼を言った


「まったく酔っぱらいに絡まれるとやっかいだな」

「ほんとです…」



でもなんとか話題もそれてくれたしよかった…




「ん?どうかしたか?」
「え?」
「気分悪いか?」



私はあまりに追い詰められたからか、顔が真っ赤になっていたらしい

それを部長は酔ったのと勘違いしたみたいだった



「あ、大丈夫です…」
「いや、少し外の空気を吸おう。立てるか?」



そういうと部長は私の右手をとり、すくっと立ち上がった


つられるままに私も立ち上がる


「ぶ、ぶちょっ?!」
「船山って案外小さいな」



突然の出来事にさらに真っ赤になる私をじっと見下ろして、のんきに笑う部長

ちゃんと並んだことはなかったけれど、部長とは30センチくらい身長差がありそうだった


「よし、行くか」

部長はそのままドアに向かって歩き出した

私は握られた右手が燃えたみたいにあつくなった









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