夏のオモイデ~打ち上げ花火~【短編】
「友達から連絡が来たから、私たち戻るね。」
連絡が来たなんて、ウソ。彩花も驚いた顔で立ち上がった。
「…わかった。もう少しで花火おわるけど…いいの?」
おわるから、行くの…。
裕太は口パクで“いいの?”って慌てた顔で私を見ている。
いいんだ、これで。
私は涼がチラッと腕時計を見たスキに裕太の耳元に顔を寄せて“ありがと”って囁いた。
「じゃ、行くね!!ばいばい!」
「…ん。またな。」
涼は微笑んで右手を軽く挙げた。
また、なんて未来くるかな。また、会えるかすらわからないのにね。
でもそれが涼の優しさ。
絶対に相手を傷つけない、優しいウソをつく。
そのウソが、すごく切ないよ。