夢でいいから~25歳差の物語
俺の今の妻が流星さんということはすでに聞いている。


しかし、なぜだろう。


睡蓮さんの吸い込まれるような瞳に、落ち着きのある声に、ドキドキしてしまう。


どうすればいい?


こんな俺の隣には微笑む流星さんがいるというのに。


なぜ睡蓮さんを見ると心臓の鼓動が早くなるんだ?


包帯をぐるぐると巻かれた頭の傷が余計に痛んだ。


「私…先生を忘れたことなんて1度もありませんでした。寝ても覚めても先生のことしか頭にありませんでした」


それから数日後、流星さんがいきなりそんなことを言い出した。


「えっ?」


「高校3年生になる春休み、いとこのところで暮らすって言い出したのも、先生を忘れるためなんです」


「ん?」


いきなりどうしたんだ?


「わかっています。私は一度、あなたにフラれました。でももう止められないんです。だから私を愛していなくても…母の代わりで構いませんから…。それに…つらいんです。苦しむ先生の姿を見るのは…」


「ほえ?」


「つらくて、悲しくて、苦しくて…私は…」


「???」


「思い出しました?」


あぁ、記憶を取り戻すのを手伝ってくれようとしていたのか。


しかし、申し訳ないが。


「いや、まったく」


相変わらず全然ダメだ。


しかし、以前に今、流星さんが言ったことを言われたことがあると思うと、ドキッとした。


彼女はこんなにも愛してくれるのに、俺は…。
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