夢でいいから~25歳差の物語
-数日後-


「あのぉ、先生?」


「なんです?」


不思議そうに私を見る先生の手元を私は指さす。


「それは一体?」


「流星さん、行きたいところがあるって言ってましたよね?だからもしかしてと思いまして」


「何を根拠に?」


「え?旅行じゃないんですか?」


まあ、合ってるけど単なる旅行じゃないのよねえ。


私は先生の手元にある旅行のパンフレットを見て苦笑した。


まぁ、「先生と行きたいところがある」だなんて言ったら旅行とでも思われるのも無理はないか。


私は思い出の場所に先生を連れて行きたかったのだ。


まぁ、これはシークレットにしておこうかな。


先生の反応も見たいしね。


「先生はどこへ行きたかったんですか?」


「そうですね…」


彼はしばらく遠くの地に思いを馳せるかのように天を仰いでいたが、やがてこう呟いた。


「北海道かな」


「北海道!」


それを聞いたとたん、私は修学旅行の出来事を思い出す。


「先生、「あーそうか」って言ってくれませんか?」


「え?」


先生は首をかしげる。


いきなりこんなことを頼まれるんだもの、当たり前だよね。


「下らないことですみません。でも…お願いします」


私が頭を下げると、先生は恥ずかしそうに咳払いをしてから言った。


「あーそうか」


「…!」


思わず私は涙が出そうになった。


記憶を失う以前の先生をそこに見たからだ。
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