夢でいいから~25歳差の物語
空港を出ると、ひんやりとして心地よい風が吹いていた。


まずはタクシーで修学旅行の時にも行った、とある修道院に行く。


観光客が十数名ほどいてわずかな話し声は聞こえるが、厳(おごそ)かな雰囲気は修学旅行の時とまったく変わっていない。


白とレンガの色を基調にした建物に映えるのは、鮮やかなグリーンの芝生。


「いいですねぇ、この落ち着いた独特なたたずまい」


そんなことを言いながら先生はシャッターを切る。


余談だが修学旅行の時、先生の写真を撮ったと言ったが(→P.47)、撮った場所はこの修道院だ。


あの写真は今でもアルバムにしまって大切にしている。


そして心ない誰かに捨てられるのは嫌だから、地獄まで持って行くつもりでいる。


って、これは一歩間違えればストーカーだろうか。


いや、ちょっと違うかな。


まぁ、先生のためならストーカー呼ばわりされてしまってもいいかも。


…とりあえず話を戻そう。


ふと、横を見ると先生が修道院に向かって拝んでいた。


よくわからないが私も真似をしてからすぐ近くの行列に並ぶ。


そんな私を先生は不思議そうに見た。


修学旅行のこと、覚えていないのかな。


自分もしっかり買って食べていたじゃない。


「先生、食べます?」


「何をですか?」


「ソフトクリームです」


「あ、じゃあ…」


ちょっと恥ずかしそうに頬を染める先生が、実に可愛らしかった。
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