夢でいいから~25歳差の物語
ま、まさか記憶が?


「先生、もしかして記憶が?」


「いや、家にケータイを置いてきてしまったことです」


「ハハハ…」


笑うしかなかった。


っていうか、今さらですか?


飛行機に乗る時とか思い出さなかったのかな。


それを先生に言うとこんなセリフが返ってきた。


「いや、昨日のうちに電源は切っておきましたから」


なんて早いんだ。


「でも先生、アラームは?」


私は、朝はケータイのアラームで目を覚ますのでこう聞いた。


「目覚まし時計で十分です」


「そうなんですか」


なんか私、先生のことあんまり知らないかも。


ちょっとテンションが下がる。


でもすぐに気を取り直した。


今日を含めて3日間、先生と2人でいられると思えば、そんなことはあまり気にならなかった。


「ちょっとこれ買ってきますね」


先生は水色のキラキラした星形の飾りをぶら下げたストラップを手にレジに行ってしまった。


誰にあげるんだろう。


まさか自分で使っていたりして。


私はその可愛らしいストラップをケータイにつけてニコニコしている先生を想像した。


「くっくっく…」


思わず笑いがこぼれる。


なんだ、かわいいじゃない。


そんなことを考えて振り向くと、先生が目を点にさせてこちらを見ていた。
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