夢でいいから~25歳差の物語
「キャー」


私は黄色い歓声みたいなものをあげた。


好きな人から至近距離でこんなことを言われたんだもの、無理はないと思う。


「これはジョージ・ゴードン・バイロンという人の名言らしいです。彼はイギリスの詩人で、1788年1月22日に生まれ、2歳の時にスコットランドのアバディーンに…」


興奮度Maxの私を前に淡々と言う先生。


何があっても冷静な性格はまったく変わってないなぁ。


なんとなく安心したような、しないような複雑な気分。


「…で、ロシアを含むヨーロッパ諸国の文学に影響を与えたんだそうです」


長い長い先生の説明が終わった。


そしてほとんど聞いていなかった私。


とりあえず満面の笑みでごまかして、ナイトテーブルの引き出しを開けてみる。


「わ、新約聖書だ」


モスグリーンのような色の表紙に金色の『新約聖書』の文字。


修学旅行の時も同じ宿だったのでわかってはいたが、やはり私にとっては珍しいのでつい口に出してしまった。


「聖書ですか」


先生も興味津々な様子で、隣から覗いてくる。


あまりにも顔が近くてドキドキしてしまった私は、聖書を先生に押し付けるようにして自分はベッドに転がった。


お腹は空いていない。


ホテルに向かう途中で夕食を済ませたからだ。


「流星さん」


私はふいに名前を呼ばれて心臓が止まりそうになった。
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