夢でいいから~25歳差の物語
翌日、1時すぎに病室を訪れると先生は昼寝していた。


「うう…」


私の気配を感じたのか、先生がゆっくりと体を起こす。


「あっ、先生。おはようございます。ってもうお昼過ぎてますが。体は大丈夫ですか?」


「あ、どうも。とりあえずは平気です」


「それは良かった」


安心して胸を撫で下ろす。


先生はニコッと笑ってからこう言った。


「いやぁ、それにしてもびっくりしました」


「何がですか?」


まったく見当がつかない。


「だって昨日、流星さんったら、抱きしめてたら寝てしまうんですもん」


「す、すいません!」


そりゃ困るよね。


つい気持ち良くてうとうとしちゃったのがいけなかったわ。


「いや、いいんです。かわいかったし」


「ごほごほっ」


予想外の言葉にむせてしまった。


「せ、先生。かわいかったって」


「あ、すいません。こんな年寄りが言ったら嫌ですよね」


いやいやいや。


そんなことは微塵も思ってないですから。


しかもあなた、年齢が30代後半って言っても多分バレないです。


いや、多分じゃなくて絶対。


それに、先生にそう言ってもらえてむしろ嬉しい。


私にとっては何よりのごほうびであり、癒しだ。


小さい頃、欲しかったおもちゃを買ってもらった時みたいに気分がうきうきしてくる。


でも、こんなことを思ってしまう。


「やっぱり先生は母が好きなんですよね」
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