夢でいいから~25歳差の物語
「流星さん」


少し切なそうな表情。


「俺は…」


先生が何か言いかけたその時だった。


ガラガラ。


「こんにちは、青山さん。調子はどうですか?」


白衣の裾をはためかせて颯爽と医師がやって来た。


その若々しい顔にはクールな微笑みがたたえられている。


爽やかな方だなぁ。


「おかげさまで」


先生はニコッと医師に笑みを向ける。


うわぁ、こっちにも爽やかな人がいた。


…なんてね、なんか考えちゃってる私です。


まぁ、それはおいといて。


「それは良かった」


しかし、しばらくは安静にしていた方がいい、と医師は言った。


元気にはなっても念には念を、というやつだろうか。


まぁ、仕方ない。


そもそも私が無理をさせたのがいけなかったんだし。


医師が出ていって、また2人きりになった。


「俺は記憶を取り戻せるでしょうか」


先生はいきなりこんなことを言い出す。


「え?」


「なんか…なんかよくわからないけど悲しいんです。俺があなた達の記憶を失ったせいで、迷惑をかけたり悲しい顔をさせていると思うと」


「そんな、先生のせいじゃありませんよ」


「でも、苦しいんです」


そんな先生に私は何も言えなかった。
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