夢でいいから~25歳差の物語
Secret2 聖夜に光るのは流れ星と涙
「…」


「…」


気まずい沈黙が部屋を支配する。


そのためだろう、時計の針の音がやけに耳に響く。


そんな静寂の空間の中、先に口を開いたのは先生だった。


「水橋、からかわないでくれ」


「そんな…私、本気です」


「だって俺は42歳だぞ。それに」


「年齢差なんて関係ないですよ」


私は先生の言葉を遮る。


しかし、先生はなおも言う。


「それに俺にはフィアンセがいる」


「え…」


フィアンセ?


つまりは婚約者?


ズキッと心臓の辺りに何かが響く。


「ごめん」


「いいえ…」


先生が謝っても私はその3文字しか言葉が出なかった。


なぜなら、次の瞬間にはカバンを掴んで「さよなら」も言わずに走り出していたから。


ダメだってわかっていた。


最初から。


でも告白せずにはいられなかった。


愛しくて、愛しくて、悲しい。


ふと何かを失ったような虚無感に襲われる。


失ったもの、それはきっと…自分。


失恋すると自分までも失ってしまうような気分になるなんて、初めて知った。


自分を失ったからか、もう何もかもわからなくなっている。


頭の中は新品の自由帳のように真っ白になっていた。


今までこの恋のことだけを考えて生きてきた。


だけどそれももうない。


先生の元に私の気持ちはないってわかってしまったから。
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