夢でいいから~25歳差の物語
「流星さん、俺…」


しばらくして先生が口を開いた。


「ついには他人(ひと)の気持ちもわからなくなってしまったみたいです。意味もなくこんなことをしてしまうなんて」


「何を言っているんですか」


「以前はこんなこと、なかったのに。なんだかおかしいんです」


「それはきっと精神的に不安定になっているからなのでは」


「そうでしょうか」


そう言って目を伏せる。


こんなネガティブな先生、らしくない。


「思い出さなくてはならないのに、思い出そうとすれば頭が痛くなってしまう。そんな自分が不甲斐ない」


「ねぇ、何があったんです?」


私の問いかけに先生はただ首を横に振るだけだ。


「わかりました。もういいです。勝手にして下さい!」


それだけ言って私は病室を出てきてしまった。


私はいったい何をしにきたのだろう。


どうして?


本当は先生が心配で仕方ないのに。


バカだ、私。


こうやって思ってもいないことを言ってまた先生を傷つけてしまった。


高校3年生の春休みの時も、今も。


こんな自分が嫌になる。


素直になれなくて先生を傷つける自分、同じ過ちを繰り返す自分、そして今すぐ病室に戻って先生の話を聞いてあげたいのにそれが出来ない自分が。


ごめん。


ごめんね、先生。
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